肝臓移植後の免疫抑制剤の服用が不要になる薬 JB-101が2026年に承認予定

肝臓移植を受けた方が生涯に渡って服用しなければならない免疫抑制剤が不要になる薬JB-101(誘導型抑制性T細胞)を日本移植学会後援のもと、順天堂大学 健康総合科学先端研究機構と順天堂大学発のベンチャー企業であるJYUNTEN BIOが共同開発中との事。
 
 
2020年に厚生労働省の先駆け審査指定制度の対象品目の指定され、治験が開始され、2025年に承認申請、2026年に薬事承認と実用化を見込んでおられるそうです。承認されれば、全ての医療施設へ届けることが可能となります。
 
 
今現在はこれから肝移植を受ける方を対象として治験が行われているようですが、奥村特任教授は対談の中で
「次のステップは、すでに免疫抑制剤を飲みながら長く生活されている方々から薬をゼロにできないか、ということです。我々の夢であり、必ずそういう時代が来ると私は信じています。」
と仰られています。
免疫抑制剤を飲み続ける事で感染症や発癌のリスクを抱えながら移植後の生活を送っておられる患者さんを思うと1日でも早くこの薬が実用化され、副作用から解放された穏やかな生活を送れる日が来る事を願ってやみません。
 
 
更に、この免疫寛容プロジェクトでは、生体肝移植を受ける患者さんだけではなく、他の臓器移植や脳死・死後移植を受ける患者さんにもこの治療法が応用できるか、また臓器移植のみならず、自己免疫疾患やアレルギー疾患などへもこの治療法が応用できるかも研究されているようです。
 
このプロジェクトで開発されているJB-101(誘導型抑制性T細胞)は、免疫反応を有益なものまで全て止めてしまうのではなく、免疫細胞による攻撃を抑制する対象を選択出来るものらしいので、将来的にもっと研究が進めば、移植臓器に限らず、自己の臓器に対するT細胞の攻撃も抑制出来るようになって、PSCのような自己免疫疾患に対する治療薬にも成り得るのではと期待します。
 
JB-101(誘導型抑制性T細胞)の作り方についてですが、免疫反応に関わるT細胞を活性化して攻撃的にするCD80とCD86という共刺激分子があるのですが、このCD80とCD86に結合して共刺激を遮断し、T細胞を反応させないようにする抗CD80/CD86抗体と一緒に、ドナーさんのT細胞と患者さんのT細胞を培養するとお互いを「異物ではない」「共存できる」と認識し、ドナーさんのT細胞が敵ではないと学習した患者さんのT細胞(誘導型抑制性T細胞)を移植手術後の患者さんに投与すると、ドナーさんの移植臓器が敵ではないという情報が体中に伝わり、拒絶反応を防ぐ事が出来るそうです。
 
ここで、抗CD80/CD86抗体の存在下で患者さんのT細胞と一緒に培養するのが、ドナーさんのT細胞では無く、ドナーさんの臓器の細胞組織であったならば、話は単純で、PSC治療においても同様に、「PSCの患者さんのT細胞とPSC患者さんの肝臓や胆管の細胞を抗CD80/CD86抗体の存在下で共培養すれば、肝臓や胆管がT細胞によって攻撃されなくなるのでは?」と思えるのですが、実際に共培養するのは、ドナーさんと患者さんのT細胞同士のようなので、「CD80/CD86による刺激のない場所でT細胞と共培養された細胞は、T細胞に異物と認識されなくなる」といった簡単な仕組みでは無いようです。記事からは選択した対象が攻撃の標的から外れる仕組みについて詳細な事は読み取れないので、ブログ主の勝手な想像になりますが、「CD80/CD86による刺激が無い環境で共培養されたT細胞はお互いを異物と認識しなくなり、情報を共有するようになる。それによって、ドナーさんのT細胞にとって敵ではないドナーさん由来の肝臓は患者さんのT細胞にとっても敵ではなくなる。」といった感じでしょうか、、、。
 
記事には
「誘導型抑制性T細胞が免疫寛容を誘導するしくみの詳細はまだはっきりとはわかっていません。」
とあるので、研究者の方々にもまだ誘導型抑制性T細胞で将来的に何が治療出来て何が治療出来ないのかについてはっきりと見通す事は出来ないのかも知れません。
 
しかし、いつか研究が進み、その仕組みが解明された時、誘導型抑制性T細胞はPSCを含む多くの自己免疫疾患を治癒する救世主になれる可能性を秘めた革命的な薬だと思うので、そんな日がやって来るのを期待して情報を追っていこうと思います。
 
 
 
 
 
記事の一部抜粋